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【年商1億以下の焼肉店が“中食事業”参入、1年で1億・3年で3億を作るロードマップとは】
本コラムでは年商1億以下の単店焼肉店が、中食事業立上げ1年で年商1億円達成、
そして3年で年商3億を目指す焼肉店の中食事業参入についてお話しをさせていただきます。
ご紹介するのは東京都東村山市にある有限会社荒川商店という企業様。
東京の郊外住宅街に位置し、単店年商約1億円のいわゆる地元密着(ローカル)の焼肉店です。
売上の減少や企業内体制の変化をきっかけにして、中食事業に参入されました。
コロナの影響もあって順調に売上を伸ばし、
1年で年商1億を達成し、今後の3年で年商3億の事業規模まで手を掛けている状況です。
同社の中食事業拡大ステップ(と数字目安)は大きく以下の3つでした。
STEP1)フラグシップとなるテイクアウト専門店の立上げ →約1億円
STEP2)店舗を活用したマルチチャネル展開 →約1.5億
STEP3)販売機能付きセントラルキッチンの立上げ →約3億円
それでは同企業様のステップ別に、その取組みやポイントを見ていきます。
STEP1)フラグシップとなるテイクアウト専門店の立上げ
まずファーストステップとして取り組んだのは、テイクアウト専門店の立上げでした。
駅ナカ商業施設内で、たった5坪での売場のスタートでしたが、
月商は約800万円超と坪売上(坪効率)は同フロア内の大手ブランドを抑えて、トップクラスとなりました。
ポイントは、
①集客商品開発、②コンセプト作り、➂時間帯別の陳列、④ピークタイムオペレーション
の4つです。
まず、①集客の面では、基本的なWeb・紙の販促媒体活用もそうですが、
元来一定数の集客が見込める立地の中で、いかにその客足を自店に向かわせるかということが肝でした。
そのため、集客商品として、40%台~50%近い原価率の商品
(名物のキューブステーキ弁当、レディース弁当・ローストビーフ丼など)を
開発・販売し、そこから他商品(弁当や食肉加工品)を別の来店時や、
買い合わせとして購買をしてもらう流れで、売上・利益を作っていきました。
また、時期ごとに、キャンペーン商品を打ち出すのも集客を増やす一つで、
肉おせち(年末年始)、ローストビーフ箱詰め(バレンタイン)、うな牛弁当(土用の丑の日)など
イベント毎の積極的な商品開発でイベントごとに集客数を伸ばし、新規客の獲得にも貢献していきました。
②の部分で、同フロアを含めて惣菜や弁当の専門店は数多く存在し、
いかに同質化しないかが売上を継続的に確保していくために必要になります。
昨今では、「牛肉専門」や「ブランド牛使用」のコンセプトもさほど珍しくないなかで、
焼肉店にも精通するコンセプトである「ブランドにこだわらない季節ごとに産地を変える仕入れ」、
「調理後の柔らかさにこだわるカット方法、加熱方法」を打ち出しています。
また、厨房には窓を付けて調理をしている様子を見せる(実際に一部商品はオーダー後に調理)、
ライブ感・出来立て感を演出し、またショーケースに精肉を陳列、
弁当のサンプルの肉も生肉風(赤身の目立つもの)のものを採用し、
使用している肉の本格感を訴求することで購買欲をかきたてる店舗設計をしています。
➂では、限られた売場面積のテイクアウト専門店として、売上を最大化していくために、
時間帯別にピークを作っていくことは非常に重要で、
時間帯変わる=客層が変わる事を念頭に置く必要があります。
おおよそ同店舗での時間帯別のメイン客層とニーズは以下のようになっており、
■オープン~昼:地元のご高齢者(昼ご飯、場合によって夜ご飯)
■昼間:近隣サラリーマン・OL(会社でのランチ)
■夕方:主婦層(夕食)
■夜(クローズまで):帰宅するサラリーマン・OL(夜ご飯)
これら客層に合わせて、陳列する商品や商品ごとの陳列量を変えていきました。
例えば、昼間ではサラリーマン・OLのランチといった弁当商品かつ
1,000円ほどの予算で購買できる商品陳列を増やす、
夕食の主婦層は、弁当はもちろんですが、食卓のおかず(=惣菜)を探している場合も多く、
特に需要の大きい揚げ物・フライの陳列を増やすなどして時間帯別の客層と
その顧客ニーズに合わせた商品陳列を組み替えていきます。
④坪数が限られている中で、必要なことのもう1つは製造の観点です。
店舗設計でライブ感・出来立て感を演出しているため、オーダー後調理をする商品もありますが、
あくまで購買してもらう客数を最大化することが必要になります。
そのため、オーダーテイク(注文後調理)と完成品の併用をしていきます。
また、それとは別に、調理の煩雑性を下げるために「数商品に注文が集中するような誘導」
(=売場内で当該商品を目立たせる、陳列量を圧倒的に増やすなど)や、
「事前の加熱」(例えばステーキであれば、事前に低温調理で加熱し、
最終調理は焼き目を付けるだけの状態にしておくなど)をすることでその場での
製造の負担を減らし、ピークタイムでも迅速に商品提供できるようにしていきます。
STEP2)店舗を活用したデリバリー・通販チャネルの付加
フラグシップとなるテイクアウト専門店の売上・顧客基盤ができつつあったなかで、
次に取り組まれたのが、マルチチャネルへの展開でした。
具体的に伸ばしたのは弁当デリバリーへの展開、チルド・冷凍食品の通販の大きく2つです。
この2つはコロナによって多くの企業様が取組まれていることと思いますが、
基本的には、店舗ブランドが無い小規模店舗は売上確保が難しいものといえます。
また、通販に至っては元々競合性が高く、資本力(販促にかけられるお金)が物言う世界であるため、
初動の売上確保は非常に難しくなっています。
そんな中で、同企業は上記と異なる点は、実店舗という確かな顧客基盤と発信拠点がある点です。
実店舗の売上基盤があるブランドでは、商品購買の体験をしている点(美味しいから便利な通販でも買う)、
来店という販売機会を生んでいる点が他企業よりも有利に働きます。
その点を活かし、同企業では弁当デリバリーへの展開、チルド・冷凍食品の通販を展開しました。
弁当デリバリーでは、高級弁当と呼ばれるカテゴリーの法人・企業・団体を中心とした顧客へ向けて、
事前予約型の案件を中心に受注し売上を獲得。
事前予約型であるため、製造負担や人員コントロールもしやすいというメリットが見られました。
また、チルド・冷凍食品は惣菜を中心に販売、近隣でかつ自店舗での既存顧客を中心に獲得しました。
本格サイトを立上げて、月数十万の販促費を掛けてというスキームではない分、
金銭的負担は他社の通販事業立ち上げよりも小さくなります。
STEP3)販売機能付きセントラルキッチンの立上げ
そして次に取り組んだのが、販売機能付きセントラルキッチンの立上げでした。
セントラルキッチンではいかに供給量(=稼働率)を上げるか、また赤字拠点としてでなく、
拠点単体でも黒字化をすることを目的に、同社では直売機能付きのセントラルキッチンとして設立をしました。
販売店では、弁当・デリカ(惣菜)・冷凍、チルド食品・精肉を主に販売しており、
コロナ真っ只中にオープンしたものの初月で約850万円/月と好調なスタートをきりました。
このコロナによって中食のビジネスチャンスが生まれる立地は、巣籠り、在宅勤務の増加などで、
繁華街・オフィス街からローカル駅(居住地)・郊外ロードサイドへと変遷しており、
同販売所もローカル駅(住宅街)かつ、もともとの焼肉店近くの立地という場所となっています。
上項にあったテイクアウト専門店の観点も併せながら、
この店舗で集客やマーケティングの面で肝となったのは、
①店舗としての面積を持つこと、②加工品が主力商品であることの2点です。
①については加工場や工場併設でよく見られる販売窓口やショーケースのみの狭い売場ではなく、
中食専門店として店の顔を持たせたこと(店舗としての面積確保)でした。
看板設置なども含む店自体の認知のしやすさや、売場拡充による品揃えを正確に認知してもらえる点など、
実際に店舗を作ることは売上確保においては非常に重要です。
②については、テイクアウト専門店と比べて、大きく異なる点が、
精肉・半加工の冷凍、チルドという商品カテゴリーをもったことです。
こちらもコロナへの対応で焼肉店など肉を主力とする外食店で精肉販売が見られますが、
この商品カテゴリーにおいて流通全体で見ると商品幅・価格などで優位性を持てるのは、
あくまで精肉小売や食品スーパーなどの業種です。(精肉販売をするのであれば相当な高原価化が必須。)
このカテゴリーに重きを置くのではなく、焼肉店や中食運営店舗として差別化・優位性をもちやすく、
集客性があるのは加工品(弁当・デリカなど)になります。
これを念頭に置いた上での店舗設計や販促媒体作りなどが必要です。
また、製造の面での肝は「いかに製造する仕掛品(商品のタネ)の種類を少なくするか」にあります。
このCKでの製造体制は社長+PAさん数名(合計4人前後)と運営人数自体は多くありません。
その中で、将来的には3億円分の製造をしていくには、仕掛品を少なくし、
多くの商品や多くのチャネルに展開していく必要があります。
実際にこのCKで作られている商品のタネの種類が非常に少ないのが現状です。
例えば、塊肉を低温調理で仕上げたものをAとします。
このAは各店舗の最終加熱の工程で焼き目を付ければステーキ、
そのままカットしたらローストビーフスライス、カット後サラダに乗せれば、
ローストビーフサラダになります。またチャネル別にみれば、Aをテイクアウト専門店や販売店で使った場合、
ステーキ弁当やローストビーフ丼として販売されます。またAをそのまま真空パックすれば、
ギフト(通販や直売所)用の塊ローストビーフになって販売されます。
このようにいかに1つの仕掛品から商品展開をし、
仕掛品幅を小さくし、生産性を上げていけるのかを考えていく必要があるのです。
ここまで以下のように、大まかではありますが、事業拡大とそのポイントをお伝えしてきました。
STEP1)フラグシップとなるテイクアウト専門店の立上げ (→約1億円)
⇒①集客商品開発、②コンセプト、➂時間帯別の陳列、④ピークタイムオペレーションを強化し、
今後取組むマルチチャネルの拠点に。
STEP2)店舗を活用したマルチチャネル展開 (→約1.5億)
⇒Web、紙での販促主体ではなく、既存店舗の顧客を活用した展開でデリバリー、通販などへ送客していく。
STEP3)販売機能付きセントラルキッチンの立上げ (→約3億円)
⇒販売店舗にはしっかりと店の顔を持たせ、加工品を主力に。
製造面では仕掛品の幅を小さくし、多くの商品を作る為の共通化
このコロナ時代で多くの外食企業様が中食事業に取組まれていることかと思います。
また市場として好調といわれている焼肉店においても、
市場の回復率が他業態(居酒屋、バルなどのアルコール業態)に比べて相対的に高いというだけで、
コロナ前の売上水準に戻っていない企業様も多いのではないでしょうか。
また今後、焼肉店の市場は別業態を運営していた大手企業が次々参入しており、
コロナが回復したタイミングでは、競合性の高い市場となり、
中小企業が淘汰されやすい市場になると見込んでいます。
そんな中でも中食市場へ進出し、外食とは別のベクトル(中食事業)で
成長を遂げる企業様が当コラムのように出てきつつあります。
そういった中食で成長をしたい、また中食に取り組んでみたが、
どうしても軌道に乗らないという企業様にお伝えしたいことがございます。
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