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クラフトサケに清酒製造免許はいらない……作り方は非常に似ているのに何故なのか。その秘密は免許の種類に

クラフトビール・クラフトジンに次ぐ第三のクラフト ”クラフトサケ”とは

「クラフトサケ」と呼ばれるお酒をご存知でしょうか?
クラフトサケとは、日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の日本酒では法的に採用できないプロセス(製造の方法)を取り入れた、日本酒のルールに縛られない、”自由で多様なお酒です”。
「どぶろく」のような、日本酒における「搾り(お酒と酒粕を分ける工程)」をしないお米が混ざった状態のお酒もクラフトサケの1つですし、フルーツや野菜、ハーブなどの副原料を使った新しい味わいのお酒もクラフトサケです。(クラフトサケ協会HPより)

何故清酒免許がいらないのか

さて、表題にもありますがクラフトサケに清酒製造免許は必要ありません。先程、日本酒(清酒)の製造技術をベースにしていると述べたのになぜか…それは、クラフトサケは免許上、”清酒”ではなく”その他の醸造酒”に区分されるからです。
酒税法より、清酒は以下のように定義されます。
酒税法(昭和二八・二・二八法律第六号)(抄)(その他の用語の定義)
第三条 この法律において、左の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。(略)
三 「清酒」とは、左に掲げる酒類をいう。
イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
ロ 米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(イ又はハに該当するものを除く。)。但し、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量をこえないものに限る。
ハ 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
酒税法施行令(昭和三七・三・三一政令第九七号)(抄)(清酒の原料)
第二条 法第三条第三号ロに規定する清酒の原料として政令で定める物品は、次に掲げるものとする。ただし、第二号に掲げる物品については、米、水及び米こうじとともに清酒の原料とする場合に限る。
一 麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでんぷん又はこれらのこうじ
二 アルコール(法第三条第五号の規定(アルコール分に関する 規定を除く。)に該当する酒類(水以外の物品を加えたものを除く。)でアルコール分が三十六度以上四十五度以下のものを含む。以下同じ。)、しょうちゅう(水以外の物品を加えたものを除く。第五十条第三項及び第四項並びに第五十六条第二項第一号及び第三項を除き、以下同じ。)ぶどう糖、水あめ、有機酸、アミノ酸塩又は清酒

(国税庁HPより引用)

クラフトサケはイチゴやモモ等のフルーツやボタニカルな素材を仕込み中に加えます。すると上記の”米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(イ又はハに該当するものを除く。)”に該当しなくなります。そして下記に該当するのでその他の醸造酒になるというわけですね。

3 その他の醸造酒
穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(1から12までに掲げる酒類その他酒税法施行令第8条に規定するものを除く。)でアルコール分が20度未満のもの(エキス分が2度以上のものに限る。)をいう。
(日本関税協会より引用)

このような経緯によってクラフトサケは清酒免許がいらない酒になっています。

清酒免許はもう取れない

ここまで話しておいてなぜそこまで清酒免許がいらない事にこだわるのか。それは新規で清酒製造免許を取得することができないからです。お酒を造るためには、国税庁によって発行される酒類製造免許が必要です。様々な申請書類を所轄の税務署に提出し、4か月程度の審査によって十分に製造・販売ができると認められて初めて、お酒を造ることができるのです。
しかし、現在日本では清酒の製造免許の新規発行は認められていません。これは国内における需要と供給バランスの調整のためです。清酒の国内消費量が減少を続ける中、既存酒蔵の供給量を可能な限り維持・保護することが狙いとされています。
一方で、日本の伝統文化であり、海外からの「Japanese Sake」として高い評価を受けている清酒を自分たちの手で造りたい…と考える企業は少なくありません。
そのため新しく清酒造りを始めたい企業は、国内の既存酒蔵から免許を買い取るか譲り受けることによって、清酒造りを実現させています(その他では他社に製造を委託するOEM形式など…)。
ただし、既存の製造免許を入手することは容易ではありません。そこで、清酒を造るのではなく、清酒に似ており、かつ清酒よりも自由で多彩なお酒を造る…という動きが近年出てき始めました。それがクラフトサケなのです。

法改正によって輸出に限っては清酒製造が認められるように!

2020年、清酒のブランド化、ブランド価値の確保・向上を図り、清酒の輸出拡大に向けた取組等を後押しするため、一定の条件の下で、輸出用の清酒を製造する場合に限って一部の要件を緩和して製造が認められるようになる「輸出用清酒製造免許」の発行が始まりました。需要と供給の調整のために、清酒製造免許の新規取得が不可能だった酒造業界において、新しく清酒が造れるようになった今回の税制改正(事実上の規制緩和)によって、清酒に注目が集まっています。まだ発行数は多くありませんが、清酒はクラフトサケとほぼ同じ製造設備で造ることができるため、その他の醸造酒免許(後述)と併せてこの輸出用清酒製造免許を取得し、清酒を輸出しているクラフトサケ醸造所も複数存在しています。通常の清酒製造免許では年間60㎘という最低製造数量が定められていますが、輸出用清酒製造免許では最低製造数量の制限がないため、取得のハードルも若干ですが下がっているのが特徴です。

「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」の違い

ただし、国内の製造されたお酒に関しても販売する際には免許が必要です。酒類販売業免許は2種類に大別されます。「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に大別されます。
類販売業免許は、「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に大別されます。
酒類小売業免許は、消費者、飲食店営業者、菓子製造業者への継続的な酒類の小売販売を認める免許です。ただし酒税の保全と需給均衡維持のため、酒税法第11条に基づき販売は小売に限られます。また販売方法、品目、販売相手により、さらに細分化されます(一般酒類小売業免許、通信販売酒類小売業免許等)。料飲店への販売も小売に含まれ、酒類小売業免許が必要です。料飲店はお酒の最終消費者とみなされるからです。

酒類卸売業免許は、酒類販売業者や酒類製造者への酒類の卸売りを認める免許です。酒税の保全と需給均衡維持のため、酒税法第11条に基づき販売は卸売に限られます。販売できる品目、販売方法により、次の8つの免許に分類されます(全酒類卸売業免許、ビール免許等)。消費者や料飲店への小売販売は不可です。

まとめ

醸造所開発支援を行っているコンサルタントとしては、日本各地に強い競争力、高い商品力をもったクラフトサケメーカーが立ち上がっていくことが酒造業界の発展のためにもなると考えております。そのための醸造所開業のトータルサポートを弊社で行っておりますので、ご興味のある方や既存事業との親和性について気になる方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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