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食品メーカービジネス

コラム仮

フード業界の垂直統合に対応する中小オムニチャネルモデルVOL.2



★中小食品メーカーだからこそ実施可能なオムニチャネル戦略(第二回)

今後避けて通れないデジタルシフト対応について、船井総研ではマーケティング面のデジタルシフトを「フードオムニチャネルモデル」として体系化しております。

■フードオムニチャネルモデル3つのステップ

フードの業界のオムニチャネルは大きく3つのステップで成立します。
 
ステップ1 SNSやHPなど、オフラインで消費者との接点を持ち、来店や購買につなげる集客ステップ
ステップⅡ 消費者とのリアル接点である、体験ステップ
①自社の一番商品を購入する物販機能
②工場見学・モノづくり体験などの体験機能
③自社の商品を美味しく食べることができる飲食機能
 
ステップⅢ リアルで接点を持った消費者をECサイトでリピート購入を促すための固定客化ステップ

■ステップ1 ネットからリアルへの集客ステップのポイント

集客ステップでの一番のポイントは、
「消費者に事前に特定商品やサービスを理解した上で目的来店していただくこと。」
 
多くの商品を品揃えしている小売業態や大手メーカーの工場見学やファクトリーなど様々な体験施設を有する場合は、店舗コンセプトや施設の魅力を伝えればよいのですが、投資コストや経営資源が限られている中小メーカーでは実現が困難です。
 
弊社メンバーがご支援させていただいている岩手県一関市に本社を持つ株式会社門崎は精肉の卸・小売が本業で、10年ほど前から都内を中心に格之進ブランドで高級焼肉店を数店舗展開しています。都内のリアル店舗でブランディングを確立しEC通販で牛肉を購入いただくというオムニチャネルを進めています。格之進に訪れる消費者はここの名物商品の一つである雲丹の肉軍艦巻きを目当てに訪れます。もちろんインスタグラムでの拡散を意識し、肉軍艦巻きを提供するお皿には、格之進の店名が一緒に映るよう工夫されています。
 
 熱海温泉に昨年7月にオープンした熱海プリン。厨房込で7坪以下の小さな店舗ですが、連日行列が絶えることなく年商1億円を越えるペースで推移しています。このお店はメディア向けプレスリリースを月1回のペースで配信し、ネットメディアでの掲載、テレビ取材などで消費者の目的来店を獲得。1号店をオープンして1年で18年7月に2号店を出店しました。
 
 愛媛県で青果の卸売・小売を展開するのま果樹園では、みかんに特化したインターネット内での一番化を進めています。例えば検索サイトで 「みかん 種類」と検索するとのま果樹園のサイトが上位にヒットします。サイト名みかん大辞典。検索サイト上位を獲得することでテレビ番組でみかんが取り上げられたり、話題になればなるほどのま果樹園のサイトのアクセス数が増え、消費者との最初の接点が増える仕組みです。
 
上記3事例でもわかるように集客ステップでは、特典商品やサービスの何で接点を持つか?を決めることが大切であるといえます。
 
 岐阜県下呂市にある精肉小売の天狗は、オムニチャネル戦略を実行すべく2年前夏に下呂温泉街に湯島庵の店名で店舗を出店しました。下呂温泉には年間110万人の観光客が訪れます。下呂温泉街にリアルの接点を持ち、通販に誘導していくための店舗です。 出店立地は決してよい立地ではなく、また店舗面積もバックヤード・厨房含め15坪以下と小型の店舗です。現状は
・繁忙期は日販60万を越える売上
・投資回収は終了(実質1年超で回収済)
・営業利益率で25%越え
と非常に低投資高収益型の店舗となっています。
 
目的来店を促す特定商品は、飛騨牛のあぶり寿司。テイクアウト型の食べ歩き商品です。SNSとしてはフェースブック、ツイッター、インスタグラムを活用し、特にインスタグラムでは店舗であぶり寿司を購入いただいたお客様にハッシュタグキャンペーンとして、♯下呂温泉 ♯湯島庵 をつけてアップしていただいたお客様にはその場で100円バックの特典をつけて拡散しています。
 
店舗を知らない観光客でも♯下呂温泉でしたところ、あぶり寿司が多く投稿されているので、その商品を目指して来店(=目的来店)を促します。 店舗名で検索してもらうよりもその地域を訪れた方が検索するビックワードに意図的に投稿を集中させることにより、インスタグラム内での局地戦でトップシェアを狙う活用法です。
 
また湯島庵では食べログをはじめとしたポータルサイトも有料化。また近年急激に検索数が伸びているグーグルマイビジネス活用に向け店舗サイトもスマホ・タブレット仕様でローコストで作成し、現在では総来店客数の15%近くがWEBやSNSからの目的来店となっています。
 
ブランドのある老舗企業であれば目的来店比率は高いと思いますが、出店して2年足らずで目的来店率が高いのは、まさにステップ1のネットからリアルへの誘導に取り組んでいるからでしょう。
 
次回はステップ2の体験ステップについてお伝えします。

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